Only time will tell you if you're right...
1年の内の時々、予想もしないタイミングで瞼の上に戻ってくる景色や記憶。
腕時計も、カーステの時計もみんな止まってたり狂ってたりしてた、いつかの夜。おなかの空き具合からもうすぐ朝が近いのをなんとなく予感はしながらも、この夜が明けないことを期待して、どこかで確信みたいに思ってた夜。
ちぐはぐな感じに、話題は昔、流行った時計のことや、時計に纏わるあたしたちが出会う前の思い出話。
なんだか今夜は時間がどっかにいっちゃったみたいだなんて話しながらも、もしかしたら、あんなに時間を気にしてたことは、あれ以来、ないんじゃないかって思い返してみたりする。
会えば会うだけ、遊べば遊ぶだけなくなっていく時間を泣きそうになるあたしに、時間はなんだか無限みたいな話し方をして、自分のはめてる止まった腕時計を見せて笑う。
時間なんて、簡単に操れるみたいに話して、眠気と空腹と、そのホントの事を話してるみたいな顔つきにすっかり、信じてしまうみたいになるあたし。
赤く光るカーステの光と、深夜営業のラーメン屋の看板、景色は確実に「バイバイ」に近づいてきて、やっぱり泣きたくなる。
さっきまでの、ハンドルを握る時間を操る魔術師もすっかり言葉が少なくなる。
ドブみたいな川の向こうに見える空から朝日が見えて来て、時計を止めようと、コンビニに寄り道しても、路肩に意味なく車を停めても、やっぱり「ばいばい」の時は来ちゃう。
あたしが車を降りて、せめてもの「またね」を言おうとすると、それより先に「後でな」と。
「おやすみ」や「お疲れさん」や「また後で」が繰り返せるのは、ホントはとっても素敵なこと。
「おやすみ」と「おはよう」の間が3年あいても、「お疲れさん」と「久し振り」が10年あいても、「また後で」とニヤっと笑い合う再会が100年あいても。
無声映画みたいに、字幕付きの映像で、いつかの夜が瞼の上に戻ってくる。
主人公のあたしたちは、どんな声をしてたっけ?
関連記事